屋上屋

屋上で小屋を建てている

日記 20230913

在宅勤務が主である職場であるのと、今年の夏の耐え難い暑さとがあいまって、すっかり外に出る習慣がなくなってしまった。天気予報を見ているとその夏も着実に終わりへと向かっているようではあるけれど、たまの買い物で外に出たならば猛暑が続いているので…

日記 20230815

ユートピアとトランジット,ノスタルジーとトランジット.トランジット・パッセンジャーは待機している.未来を忘却し,過去を濃縮しながら.何もしない.だが透明で,晴朗で,軽やかな微動を忘れずに. 細川周平『ノスタルジー大通り』*1 友人たちとの夏の…

君たちはどう生きるか

実家の裏手には竹林があり,竹林を越えると溜め池があった.竹のあいだを進んで堤に登ると池を見渡すことができる.その光景に一際目立つのが,池に住み着いていた大きな青鷺だった.大きな翼がゆっくり近づいてくる.小鳥たちが途端に散っていく.そうして…

日記 20230715

Github Pages でブログをホストしてみたりするなどしていたので,はてなのほうにはずいぶん長くご無沙汰になっていた.commit して push して CI が回って記事が公開される,というプロセスもおもしろいのだけれど,さっくり書こうと思うときにはやっぱり手…

日記 20221228

歩くことは認識の速度だ。

日記 2022-06-16

アドルフ・アイヒマンが「凡庸な」という形容詞から想像されるような平均的人物ーーつまり平均的な程度に無能な人物ーーでは決してなく、むしろ彼はきわめて勤勉で優秀な働きをみせる労働者だった、ということが共通了解となってから既に久しい。アイヒマン…

日記 2022-01-23

キムチに煎りごまを多めに振るといっそうおいしい。

西藤定『蓮池譜』

いただきものの感想を。 * 青嵐 鰯が飛んでいるようなにおいの町に平日もいる(170) ただ地上で佇んでいるときにもからだには1気圧の力がかかっていて、それで私たちが潰れてしまうことがないのは、体内に存在する空気が同じ力で押し返しているから、らしい。…

日記 2021-10-25

シャワーの湯温を1℃上げる。 感覚は変化に対して鋭敏で、小さな違いであるようでも湯ははっきりと熱くなるのを感じる。 一方ではっきりしない変化というものもあって、その中では感覚はうまく働かず、むしろ鈍麻していくのだろう。 大きな両手鍋を買ったので…

日記 2021-10-14

夜道をひとり歩くときの ( 何との? ) 親密さ。

日記 20210710

季節はめぐり、夏の光をもとめて散歩へ。 涼しさがほしくなって、晩ごはんに蕎麦をたぐりにいく。 同行人が「蕎麦は季節ごとに食べたくなるのですごい」と言っていたので、今日食べたのは初夏の蕎麦。 帰宅したならば雷雨がやってくる。梅雨が終わりに近づけ…

われらみなbotのようなもの

一人ののあいだに到達するかどうでもいい、それは短い観念〉にもノマド的な隠語なの将軍は世界のです、もはや二分法的な本というものは多分雑草である。— ひるめり (@hirumeri) 2021年6月30日 (シーニュ))実に奇妙な強度、機械となったものである頂点への…

日記 20210528 Oisix雑感

Oisixを試してみた。個別にプラ袋に梱包され、土もきれいに取り除かれた野菜が届き、なんだかぞわぞわとした違和感がある。お試しセットは献立単位のキットになっていたので、食材にレシピがついてくる。ところどころの工程に「お手伝いポイント」の表示があ…

日記 20210508

たこ焼きをくるりと返しながら、たこ焼きを焼き続ける人生というものもありうるのだ、ということを思った。

日記 20210503

僕は選ぶ。僕は選んだ。僕は選ぶだろう。僕は。 一九五七年、人間が作った地球生れのある物体が宇宙めがけて打ち上げられた。この物体は数週間、地球の周囲を廻った。そしてその間、太陽や月やその他の星などの天体を回転させ動かし続けるのと同じ引力の法則…

日記 20210425

人通りが少なくなった商店街。「CLOSED」の札がかけられた店舗があり、「臨時休業」の張り紙がしてある。そのような店舗が一つならずあり、電気の消えた街並みは薄暗く、月が見慣れない明るさで浮かんでいた。こうして街は死んでいくのだなということ、そし…

土井善晴の新刊告知を見て考えたこと

Twitterで見かけた土井善晴の新刊は『くらしのための料理学』というらしい。「学」ときましたか。 わー❣️うれしい 見本誌があがってきました。そもそも料理とはなんですか(?)という問いに答えようと書きはじめたことが一冊になりました。料理がわかると料理…

日記 20210318

日ごとに暖かくなってくるような気がする。読んだり書いたりする元気が少しずつ戻ってくるような気がする。日常のちょっとした煩いをやっていくための諦めを少しずつ深めていくような気がする。全部殺すという気合を忘れないこと。とりあえず外に歩きに出て…

日記20201112

昨日の日記を通勤電車で書く日があってもよい。 久々に山に登る。 前夜思い立って翌朝行ける場所に山があるのはよい。つくづく山と海の間にへばりつくようにして我々は暮らしているのだ、と思う。 山を歩いているとき、無心になる人もいれば、いろんなことを…

日記20201023

勤務先が大きなオフィスビルの一角にあるし、最寄り駅が一つしかないから、必然的に通勤時間の駅は混んでいる。地下鉄駅から地上へと出ていくときの細いエレベーターに並ぶ人たち、群れをなすようにして橋を渡り、オフィスビルに吸い込まれていく人たち。ぼ…

日記20201010

やっていた仕事が終わらなくてしばし延長線となってしまう。調べていたことがなかなか明らかにならないだけで、疲弊するほどのことではないのだけれど、結局真相にたどり着くこともなく、まったく展望のない小山を登ったときのような釈然としない気持ちだけ…

たった一つとして冴えたやり方なんてない

あわただしく連休。 知人の結婚式に参列する。キリスト教式結婚式ではお馴染みの次の文言を聞き、しばし考える。 病める時も健やかなる時も 富める時も貧しき時も 妻/夫として愛し、敬い、 慈しむことを誓いますか? ふつうに想像すると「こんなん無理やろ…

日記20200831

仕事を終え、職場のビルを出たところで、風の意外なつめたさを知る。八月の終わりを感じるにはお誂え向き、しかし今年はまだ台風も夕立も浴びていない。夏の空気というものをいちばん感じるのは、照る日の力強さやうだるような暑さでもなくて、ただ暴力的に…

道端に座り込むこと

都市的な空間に出た。街から人の姿が消えていたのはもう昔々のこと。今日の街には人の姿が溢れていて、まるで大昔に戻ったみたいだった。それでも見なくなった姿というのもあるな、とふと気づく。路石に、道端に、座り込んでいる人々の姿だ。 とはいえ、ここ…

遺失物

浪人生だったころ住んでいたのは地方のある町であり、その町はお世辞にも栄えているとは言えなかった。大手の予備校なんてものもあるわけなくて、ぼくは片道1時間強のあいだ高速バスに揺られながら隣県の中核都市にある予備校に通っていた。浪人生の時間割は…

日記 20200510

雨の予報だった。昼前に起きてみると太陽が顔を出している。空気は湿り気を帯びたままで、気温は上がっていく。半袖で曖昧な午後を過ごす。 日が沈めば涼しくなっていく。しかしながら空気は相変わらず湿ったままだ。夜風に粘度を感じる。こういう夜はきのこ…

日記

4/6(Mon.) 初出社。といっても、社用のPCと健康保険証その他を受け取り、指定の書類を提出するだけ。電車に乗ったのは3週間ぶりくらいで、中吊り広告の少なさに気が付いた。乗客の大多数はマスクをしていて、つまり、少数の人々はマスクをしていない。彼らを…

ガウデアムス

就職する。働き始める。コロナウイルス関連の対応で延びていたのだけれど、いよいよ月曜日に初めての出社となる。とはいっても、最小限の手続きが行われるだけで、次の日からはリモートでの研修が始まる予定だ。入社式は五月に延期された。どれくらい僕は「…

砂漠の果て、海のほとり――千種創一『砂丘律』についての試論

Die Welt ist fort, ich muß dich tragen. Paul Celan * 序 * 感情を残すということは、それは、とても畏れるべき行為だ、だから、この歌集が、光の下であなたに何度も読まれて、日焼けして、表紙も折れて、背表紙も割れて、砂のようにぼろぼろになって、…

あとがき

あとがきというものが好きだ。 例えばかっちりと書かれた学術書であっても、あとがきには著者の私性がほろほろとこぼれだしている。そのほろほろとした感じが好きなのだと思う。 今日は修士論文を提出してきた。出来がよいとは言いがたいものになってしまっ…