屋上屋

屋上で小屋を建てている

日記

4/6(Mon.)

初出社。といっても、社用のPCと健康保険証その他を受け取り、指定の書類を提出するだけ。電車に乗ったのは3週間ぶりくらいで、中吊り広告の少なさに気が付いた。乗客の大多数はマスクをしていて、つまり、少数の人々はマスクをしていない。彼らをどこかで非難する自分がいる。自らの中に生じる小役人的な気持ちとの付き合い方は未だに分からない。『ペスト』の登場人物の一人、タルーは次のように言う。

誰でもめいめい自分のうちにペストをもっているんだ。なぜかといえば誰一人、まったくこの世に誰一人、その病毒を免れているものはいないからだ。そうして、引っきりなしに自分で警戒していなければ、ちょっとうっかりした瞬間に、ほかのものの顔に息を吹きかけて、病毒をくっつけちまうようなことになる。(…)りっぱな人間、つまりほとんどだれにも病毒を感染させない人間とは、できるだけ気をゆるめない人間のことだ。しかも、そのためには、それこそよっぽどの意志と緊張をもって、決して気をゆるめないようにしていなければならんのだ。実際、リウー、ずいぶん疲れることだよ、ペスト患者であるということは。(p.376) 

万人がこの「疲れ」とともに生きている。弛緩してしまっても疲れて果ててしまっても、「ペスト」にやられてしまう。いつまでこの日常が続くのかはわからないけれど、うまいやり過ごし方を見つけなければならない。

ペスト (新潮文庫)

ペスト (新潮文庫)

  • 作者:カミュ
  • 発売日: 1969/10/30
  • メディア: ペーパーバック
 

 

石弘之『感染症の世界史』を読む。

感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)

感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)

  • 作者:石 弘之
  • 発売日: 2018/01/25
  • メディア: 文庫
 

 歴史に予防法などを学ぼうとしたわけではない。歴史的な見通しを得ることのほうを欲していたのだと思う。細菌やウイルスの伝播と人間の活動の活発化が密接に関連していることには、もうなんかロマンを感じてしまう。世界は複雑(系)なのだ。それは正確に見積もることが可能なものではないだろう。ウルリッヒ・ベックを読み返したくなる。

 

4/7(Tue.)

研修開始。とはいえリモート。

まだ負荷はかかっていないけれど、これだけの時間を拘束されるとなると、家事やらを回していくのは難しくなっていきましょうね、とひしひしと感じた。現在の社会における「定時」がホワイトカラー男性+専業主婦というごく限定的な家族形態に準じてきたことを知ってはいれども、実体験として感じてみるとまた違った味わいがある。

晩御飯は白米、みそ汁、花椒ジャーマンポテト。せっかくリモートなのだから、自炊の習慣は守っていきたいところ。

宇野重規『民主主義のつくり方』を読み始める。

民主主義のつくり方 (筑摩選書)

民主主義のつくり方 (筑摩選書)